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1988年8月号
「四角四面に渡らずに、人事を尽くして天命を待つこと」
雲間から日が射しこむように突然に夏はやってきます。
今夏、私は古希を迎えました。<人生70古希稀なり>とは杜甫の言葉でありますが、寿命の延びた現代では、ましてESPという力の前では決して稀ではありません。
札幌友の会では27歳の娘さんが蘇生したという話がありました。驚くことに今は元気で生活しておられる、ということであります。
顧みれば私の70年の人生にはいろいろな出来事がありました。
その間、学んだことも数多くあります。中でも私の営業時代の人生教訓は、今でも自分自身の役に立っております。
その一つに相手の話に同調するということがあります。ということは自分の考えを押しつけてはいけない、ということでもあります。
イランの事件で墜られる前に墜らねばならないと思った、という防衛予備知識が大きな悲劇を招きました。
防衛ということが攻撃になってしまいました。戦争の中では負けて勝つ、ということは出来はしませんが、私たちの日常の中では、<負けるが勝ち>という精神は通用するはずです。
大事なことは相手の気持ちになって、相手の話に耳を傾けることであります。自分を強調すればそれは攻撃になってしまうはずです。世の中、四角四面で渡ろうとするから無理がいくのです。
そのためにする演技は、善意ある演技といってもよいはずです。そうすれば自分も人も丸く、明るくなるはずであります。
どんなに強いようにみせても所詮人間は弱いものです。やることもやらないで疑ったり、恐れをなしたりする、その迷いが一層人を弱くするものなのです。
精いっぱい人に合わせ、精いっぱい人のためを考えれば、後は強い気持ちで正々堂々と結果を待っていられるものなのです。そしてそこには自信が沸いてくるでしょう。
あるお母さんが、やくざに入った息子のためにシールをいっぱい貼ったら、そのシールをジイーッとみつめた息子さんが、もうヤクザの場所に行かなくなったという話もあります。
そのお母さんはシールをいっぱい貼ることで、人事をつくして堂々としていたのでしょう。
自分の全力を発揮した後は、あれこれ理屈を考えずに、後の結果を待つことがかえってよい結果をもたらすものなのであります。
それが古いようですが、<人事をつくして天命を待つ>ということなのでしょう。あなたの気持ちだけで、世間や人を見ているから苦しくなるのです。
もうこれからは心の時代に入りました。どんな科学者でもどんな医者でも、結局は<心>というものに勝つことはできないはずです。
「先生はご高齢だから」とよく言われますが、まだまだ私の人生はこれからです。高齢という言葉を頭からはずし、沢山の人助けをして、そして天命を待ちましょう。